今回のテーマ
相続についての基礎知識〜その3〜
相続を円滑に進めるカギは「遺言」です。
遺言がないと、相続人全員での合意や書類作成に時間がかかり、時にはトラブルにつながることもあります。
遺言があれば分け方の指示に加えて「遺言執行者」を指定でき、銀行手続きや名義変更がスムーズになります。
今回は、自筆証書遺言と公正証書遺言の違い、形式不備の注意点、最低限の取り分である「遺留分」まで、実例を交えて分かりやすく解説します。
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今日はズバリ「遺言があると何がラクになるの?」を初心者向けに伺います。
遺言ってハードルが高そうで、つい後回しにしがちですよね。 -
澤田弁護士 そうなんです。
でも遺言がないと、相続人全員で話し合って「遺産分割協議書」を作る必要があり、連絡がつかない人がいるだけで手続きが止まりがちです。
一方、遺言があれば基本はその指示どおりに分けられて、銀行や不動産の名義変更も進めやすくなります。
さらに「遺言執行者」を決めておくと、その人が代表して実務をグイッと進めてくれるので、ご家族の負担がグッと軽くなります。
執行者は相続人でも弁護士や信託銀行でもOKで、あらかじめ「誰が動くか」を決めておくのがポイントです。 -
作り方の種類も気になります。
自筆証書と公正証書、どう使い分ければ良いでしょうか? -
澤田弁護士 自筆は手軽ですが、作成日・署名・押印・本文は原則すべて自書などルールが厳格で、二重線の修正や読みにくい字は「有効?」と争いの火種になりがちです。
財産目録の一部はパソコン作成もOKになりましたが、本文は手書きが原則です。
公正証書は公証人が関与するため形式ミスのリスクが低く、内容も明確に残せます。
費用はかかりますが、安心感は大きいので、体調面の不安がある方や、事情が複雑なご家庭には公正証書をおすすめします。 -
内容面の注意はありますか?
家族が納得しないケースも想像しちゃいます。 -
澤田弁護士 ポイントは「遺留分(いりゅうぶん)」=最低限の取り分です。
配偶者と子が相続人に含まれる場合は全体の1/2が目安、子がいなくて親が相続人のときは1/3です(兄弟姉妹には遺留分はありません)。
もし侵害されたと感じたら、侵害を知った時から1年以内に内容証明などで意思表示します。
だから、遺言を作る側は、生前に多めに渡している人がいればその旨を書いておく、最低限の取り分に配慮する、家族に事前に方針を伝える——こうした工夫で、グッと揉めにくくできます。
公益団体への寄付を組み合わせる設計も増えていますよ。 -
なるほど。「形を決める」「誰が動くか決める」「家族に伝える」の3つが入口ですね。
今日聞いて、ぐっとハードルが下がりました。 -
澤田弁護士 その通りです。迷った段階で一度ご相談ください。
みお法律事務所では、状況をおうかがいして、自筆と公正のどちらが合うか、遺言執行者は誰が良いか、もめにくい文面のコツまで、やさしく具体的にご案内します。
「思い立った今」がベストタイミングです。
みおのまとめ
遺言がないと、相続人全員の合意形成や書類作成に手間がかかり、思わぬ対立を招くことがあります。
これに対し、遺言があれば分け方の指示を明確にでき、さらに「遺言執行者」を指定しておくことで銀行手続きや登記を代表して進められます。
自筆は手軽ですが、作成日・署名・押印・本文自書などの形式不備が争いの火種になりがちです。
公正証書は費用がかかる一方、有効性と見通しの良さが安心につながります。
また、配偶者・子(子がいなければ親)には最低限の取り分=遺留分がある点にも注意が必要です。
迷ったら先送りせず、状況に合った形を検討することが大切です。