今回のテーマ
いい遺言を書こう
11月15日は語呂合わせで「いい遺言(いごん)の日」とされています。
ご自身の死後、大切な家族が遺産相続で揉めないようにと、遺言書を作成する意識を持つ方は年々増えています。
しかし、「遺言書さえ書いておけば全て安心」だと思っていませんか?
実は、その内容次第では、逆に新たな争いの火種になってしまうこともあるのです。
特に注意が必要なのが、法律で保障された最低限の取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」の問題です。
良かれと思って書いた遺言が、残された家族を苦しめる結果になっては本末転倒です。
今回は、トラブルを避けるための「いい遺言」の書き方と、遺留分について紹介します。
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澤田弁護士 今回は11月15日が「いい遺言の日」ということで、今週と来週は「いい遺言を書こう」というテーマでお話しします。
遺言は「書けばいい」というわけではありません。
「 遺言があったばかりに揉める」ということにならないようにしましょう。 -
遺言があったせいで揉めるなんてことがあるんですね。
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澤田弁護士 揉める遺言の例を挙げると、相続発生後に「遺留分を侵害している」と不公平に感じる人がいると「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」をされるというものです。
遺留分とは法定相続人の相続期待権を保護するという趣旨で、配偶者・子ども(子どもがいない場合は親)については、ざっくり法定相続分の半分の取り分は権利として保障されています。 -
遺留分は最低限保障されている権利ということですね。
では、その法定相続分はどれぐらいですか? -
澤田弁護士 法定相続分のおさらいをすると、配偶者と子どもの場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子どもは残りの2分の1を子どもの数で分けます。
例えば子どもが3人いたら、3人は6分の1ずつが法定相続分ですが、法定相続分の半分は遺留分として保障されるので、遺言で財産の分け方を指定する場合には、遺留分相当の価値がある財産を渡す配慮が必要になります。 -
澤田弁護士 なお、第三順位の兄弟姉妹が相続人になる場合には、兄弟姉妹には遺留分はありません。
子どもがいない、親がすでに亡くなっているというケースだと兄弟姉妹とか甥や姪が相続人になりますが、兄弟姉妹には遺留分がないので、「全財産を配偶者に」と書いておけば問題はありません。 -
法定相続分は配分の目安で、遺留分は配分の最低ラインという感じですかね?
では改めて、「遺留分侵害額請求」について教えてもらえますか。 -
澤田弁護士 遺留分の権利を行使するには、遺留分を侵害されていると知った時から1年以内に、財産を多くもらった人に対して、侵害されている金額を払うよう請求する必要があります。
遺留分の侵害とは、遺言で侵害する場合もありますし、遺言がなくても、たとえば、ほとんどの財産を生前贈与していて、少ししか遺産がなかったというケースでも遺留分侵害額請求ができる場合があります。 -
具体的に遺留分を侵害してしまうパターンを教えてください。
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澤田弁護士 分けるべき財産が自宅不動産だけという場合、その自宅を特定の相続人に相続させようとすると、他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。
また相続税の対策で、子どもや孫に多額の生前贈与をしたり、財産を圧縮するためにローンを組んで収益物件を建てたり、二世帯住宅を建てたりして、財産が分けにくくなってしまうと遺留分を侵害するリスクが増えます。
揉めない「いい遺言」を書くには、遺留分を侵害しないようにすることを覚えておきましょう。
みおのまとめ
これは、配偶者や子どもなどに最低限保障された遺産の取り分のこと。
もし遺言の内容が特定の誰かに偏りすぎていて、他の相続人の遺留分を侵害していると、「遺留分侵害額請求」という金銭トラブルに発展する可能性があります。
兄弟姉妹には遺留分がありませんが、配偶者や子どもがいる場合は要注意です。
特に、主な財産が自宅不動産のみの場合や、特定の相続人に生前贈与を多くしている場合は、計算が複雑になり揉める原因になりがちです。
「いい遺言」とは、家族の絆を守るためのもの。
遺留分を考慮したバランスの良い配分にすることで、争いを未然に防ぐことが大切です。
ご自身の遺言内容が法的に問題ないか、遺留分を侵害していないかなど、遺言書の作成や相続に関するご不安は、一度みお綜合法律事務所にご相談ください。